奈良公園のシカ~芝刈りについて~

日本でシカといえば、奈良公園が有名ですよね。奈良公園には約1200頭のシカが生息していて、そのほとんどがメスなのだそうです。彼らは奈良公園で飼育されているのではなく、全て野生のシカ。国の天然記念物に指定されている大事な存在なのです。

そんな彼らに関して面白い話があります。奈良県のある高校教師による試算によると、奈良公園にいるシカの日給は1万円ほどなのだそう。その主な内訳は、奈良公園の広告塔としての役割をするモデル料と、芝生を食べて本来なら年に5回ほど必要な園内の芝刈りを代わりにする芝刈り料だそうです。神の遣いとして大事にされる存在でありながら、しっかり働いてくれるシカさん、ありがたいですね。

奈良公園のシカ~エサとの様子~

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彼らのエサは観光客にもらう鹿せんべいだけでなく、奈良公園からも決まった時間に与えられます。このとき「パブロフの」のように、シカを集めるために使われるのが、ベートーベンの『田園』。明治25年からずっと、エサの時間の合図はこの音楽なのだそうです。

しかし、一方で野生のシカが生息する地域では、シカはしばしば害獣として扱われます。というのは、彼らは草食動物ですが、ただの草の他に、稲、麦、大豆、トウモロコシなどの農産物や、椎茸、松茸などの林産物も食べるからです。

また、シカの鳴き声は「キャーッ」という甲高いもので、女の人の悲鳴のように聞こえるそうです。田舎では珍しくないことだと言われていますが、夜中にこんな声が聞こえてきたら…不気味かつ紛らわしいですね。

シカの肉と漢方薬

馬は「さくら」、猪は「ぼたん」、ではシカの肉はなんというでしょうか。正解は、「もみじ」です。シカの肉は、その呼称の通り、脂肪の少ない赤身の肉で、とてもヘルシーなお肉として有名です。

そのカロリーは豚やに比べて3分の1、脂肪はなんと15分の1となっています。しかも高タンパクで、お肉なのに、青魚に多いDHAも含まれているというから驚きです。さらにアミノ酸、ミネラル、鉄分も豊富なのだそうです。かなり健康に良さそうですね。

また、シカは漢方薬としても重宝されます。これは「鹿茸(ろくじょう)」といって、若いシカの生え代わり途中の柔らかい角である袋角を切り取ったものです。中国では、3000年以上も前から不老長寿の薬として使われてきました。鹿茸はシカが若いほど高く売れ、「上台鹿茸」は最高級の漢方薬として扱われます。

また、自然に抜け落ちた角にも薬効があり、競走馬のエサに混ぜたり、植物の肥料に使われたりしているそうです。また、その効能は大学機関により科学的に確認されていて、注目されているそうです。ちなみに「鹿角霊芝(ろっかくれいし)」という漢方薬もありますが、これはシカの角ではなくキノコの仲間です。サルノコシカケ科のキノコで、形が袋角の形に似ていることからこの名がつけられたそうです。
(Photo by Clay Heaton)

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