トビウオの飛ぶ能力について

トビウオは非常に特殊な外見を持った魚で、まるで筒のような姿をしています。

そのトビウオの、飛ぶ能力について考えてみましょう。まず、厳密にいうとトビウオは飛んでいません。滑空(かっくう)しているのです。

そんなトビウオは、種類にもよりますが、時速50~70km程度のスピードで滑空します。これは、どんなとに滑空するかと言うと、身を守るためです。例えば、カツオやマグロなどの天敵に襲われた時、トビウオは海面から飛び出て空中を滑空します。

トビウオが滑空する理屈は、水中で尾びれを振るところから始まります。その勢いのまま海面へ飛び出ます。そして、そのまま胸びれと腹びれを広げ、グライダーのような形になって空気抵抗を利用して滑空するのです。

滑空する距離ですが、追い風の時は400~500mも滑空するといわれています。またトビウオは、空中で身体を傾けて方向転換をすることもできます。そして、勢いが無くなっても、尾びれだけを水に触れた状態で加速して、もう一度飛ぶことができます。このようにトビウオが逃げる時、すごい力を発揮するのです。
また、トビウオの滞空時間のギネス記録が42秒です。このようにトビウオは特殊能力を持った魚といえます。

酒田ラーメンに活用されるトビウオ

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トビウオは食材としても重宝されており、初夏から夏にかけてまでが旬です。新鮮なトビウオの刺身は、脂肪分が少なくて美味しいことで人気があります。また、トビウオは白身魚ですから、フライや塩焼きにして食べるのが一般的です。
ただし、トビウオには骨が多いことが、料理する上で難点であるといえます。しかし、このトビウオの骨の多さを活かして、魚介ダシにすることもあります。例えば、トビウオの焼干しを特産としている山形県酒田市では、ラーメンのダシにトビウオの焼き干しを使うことがよくあります。これがトビウオのダシで作った「酒田ラーメン」として人気です。

トビウオに限りませんが、動物系に比べて魚介系は短時間でダシが取れます。自宅で酒田ラーメンを再現する場合、トビウオのダシを使えば短時間でできるのでオススメです。

なお、酒田市内で中華そばを売り始めたのは中国人です。現在ではインスタントラーメンやご当地ラーメンなど、ラーメンという言葉が普及しています。そのため、一般的には酒田ラーメンと呼ばれています。しかし、かつてラーメンは「中華そば」か「中華」と呼ばれていました。

トビウオの子どもは人気の珍味

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「とびっこ」という珍味をご存知でしょうか。時々、寿司ネタにも使われるものです。
「とびっこ」はトビウオの卵を塩漬けしたものです。トビウオの子どもだから「とびっこ」なのです。
「とびっこ」は赤みが強い粒状の卵が集まっているという特徴があります。その見た目が理由で、ゴールデンキャビアなどと呼ばれることもあります。

ちなみに「とびっこ」とカズノコとの違いですが、カズノコはニシンの卵です。見た目は多少似ている部分もありますが、生まれてくる魚が全く違います。

トビウオの豊漁は天草の不作

トビウオに関する格言の中には不思議なものがいくつかあります。「トビウオの豊漁(ほうりょう)は天草(テングサ)の不作」という言葉をご存知でしょうか?

なお、天草とは赤紫色の海草の一種で、寒天やトコロテンの材料として使われています。この天草は伊豆の特産品で、縁起の良い海藻として有名で、かつては延喜式などでも使われていました。
はっきりとした理由は不明ですが、トビウオが豊漁の年は、伊豆七島の方では天草が不作になってしまうといわれています。実際にトビウオが豊漁の年ほど、天草が不作になるので、漁師や農家の人がこれを参考にしています。

(Photo by Patrick Coin, Jean Fortunet, NOAA Photo Library)

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