イトウは糸のように細い魚?

イトウの和名は「糸魚」です。イトウはサケの仲間で大型に成長しますが、その身体が細長いので「糸魚」と名づけられました。

イトウはサケの仲間ですが、繁殖後すぐ死ぬようなことはなく、生きているうちに何度も産卵する魚です。繁殖後は身体がやせて細くなり、繁殖地の上流や下流へと泳いでいきます。そこでやせたイトウが頻繁に見つかるため、この「糸魚」という和名が名付けられたのです。ただ、糸のように細く見えるとは言っても、イトウは最大で1.5メートルになるものもいるので、糸よりも縄といった方がしっくりくるかもしれません。

絶滅の危機にあるイトウ

240px-Hucho_perryi_by_OpenCage
イトウは最大で1.5メートルにもなる大型の魚です。そのため、多くの釣り人に人気があります。

イトウを狙う釣り人の間では、「釣り上げたらすぐにリリースする」という暗黙のルールが存在します。この理由をご存知でしょうか?

それは、イトウが絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)に指定されているからです。昔、イトウは岩手県や青森県などに生息していました。ところが現在では、北海道の一部地域などでしか生息していません。その理由は、ダムや河川への開発による環境汚染といわれています。イトウは上流と下流を含めた河川全体でないと生きていけませんから、環境汚染が原因でイトウの住処が少なくなったのです。

他にもイトウ減少についての説が色々あります。イトウの産卵場所は川の最上流ですが、住む場所は下流付近のため、イトウは移動距離がかなり長いことが理由で、イトウの数が少なくなっているといわれています。たしかに産卵場所が住処から遠いと、それだけで種の存続のリスクになるといえます。しかしそれよりも、人間が自然を考慮せずにダム建設などしたせいで、イトウが産卵場所への移動できなくなったため、イトウをかなり減少させてしまったという説が有力です。イトウの生態が減少の原因であると考えるのは、身勝手すぎるでしょう。

先ほどお伝えした「釣り人が釣ったイトウをリリースする」ことについても諸説があります。果たしてリリースすれば、イトウの減少を防ぐことに繋がるのでしょうか?釣り挙げた時点ですでに魚は体力が奪われてしまっているので、リリースしたとしてもダメージが残ったままです。イトウはデリケートな魚です。釣り上げたイトウをすぐにリリースしても、ダメージを受けているため、すぐに死んでしまうかもしれません。

イトウの減少を少しでも食い止めるためには、ただリリースするだけでなく、イトウ釣りに制限をかけるなど、保護のための管理を行う必要があります。現在、絶滅危惧種のイトウを保護する活動が各地で展開されていて、多くの人がイトウに関心を持っています。こういった活動が、イトウの減少を防ぎ、イトウの繁殖につながって欲しいですね。

イトウの増加への希望

前述したとおり、イトウはサケの仲間でありながら、繁殖後も息絶えることはなく、生涯で何度も産卵を繰り返すことができます。現在、イトウの数が少なくなっているのは、開発と環境汚染によって住処や産卵場所が失われたからです。しかし、イトウは何度も産卵するので、またイトウの住処や産卵場所さえ確立することができれば、絶滅を防ぐことが出来るでしょう。実は、イトウは絶滅危惧種に指定されてはいるものの、特に保護を受けているわけでもないのです。
今後、国がイトウへ対する何らかの保護を行えば、イトウの未来は明るくなるでしょう。

また赤石水産漁業水産組合という場所では、イトウの養殖や出荷が行われています。イトウは養殖可能ですから、環境さえ整えばイトウの増加は実現できるでしょう。今後のイトウに対する保護活動に注目していきたいですね。
(Photo by ほくなん)

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