クエは垢で穢れた高級魚です

魚のクエはとても高級な食材で、1キロ1万円を超えることもあります。でも、その高級さとは対照的に、クエの外見はどす黒く、口が大きく不気味で、すこしグロテスクです。

なお、クエを漢字にすると「九絵」や「垢穢」と書きます。「クエの体の縞模様(しまもよう)が生きている間に九回変化するから」とか、「身体の模様が何枚かの絵に見えるとも見えるから」ということから”九絵”と呼ばれるようになりました。ちなみにクエが大人に成長しきると、体の模様が薄くなり、ほとんどわからなくなります。

「垢穢」とは、垢で穢(けが)れている、という意味の言葉です。クエの色がどす黒く、まるで垢で汚れているかのように見えることから、このように呼ばれていました。

たしかにクエの見た目は垢に汚れているような色でグロテスクともいえます。しかし、クエの身はとても綺麗な白色で、見た目は悪くても非常に美味しい食材として有名です。

クエが生まれたときの不思議な性別

Epinephelus_bruneus_at_NPA
不思議なことに、クエは生まれたとき全ての性別がメスといわれています。

クエには、雌性先熟(しせいせんじゅく)という特徴があり、生まれてから性転換をする特殊な魚です。雌性先熟とは、生まれた瞬間は全てメスで、繁殖を終えた後にオスになるという生態のことです。一般的な魚の場合、大きくて強いオスだけが縄張りを持ち、小さくて弱いオスが子孫を残せないということがよくあります。ですが、クエは雌性先熟の特性を持っているので、こういったケースを未然に防ぐことができます。どういうことかというと、クエは小さいうちはメスとして繁殖し、その後大きく成長した頃にオスとして活動し、子孫を残すことができます。このため、他の魚よりも効率的に種全体で繁殖活動を行うことができるというワケです。

このことから、大きいクエは全てオスであるといえます。オスへと成長したクエの身は、まるでや豚の肉のようにしっかりしていて、良く脂がのっており、とても美味しいです。

「クエもなかなか餌を食えん」という語呂合わせ

320px-Epinephelus_bruneus1
クエの名前の由来にもう一つ、なかなか餌(エサ)を「食えん(クエン)」から、クエと名付けられたという説があります。クエは普段は深海に生息しており、冬の頃の水温が低い時期に深海から上がってきます。しかし、漁で取れる場所までクエがやってきても、昼間だとクエはじっと岩場に隠れて動かない性格があります。ですから、クエ漁は深夜に行うのがポイントです。

またクエは餌をなかなか食べないことで有名です。クエが食事をするのは一週間に1回あるかないかといわれています。このことから、たとえプロの釣り人であっても、クエを釣り上げることはとても難しいのです。
クエは漁に出てもなかなか釣れず、めったに食べられない貴重な魚です。「食えん」からクエと名付けられたクエですが、実はクエ自身も獲物を捕らえることが苦手という説があります。クエの捕食のやり方は、自分の巣の近くを通る魚を狙うという「待ち」のスタイルです。クエは大きな身体のわりには、小心者で天然ボケみたいな性格といわれています。クエが捕食する時は巣から出てゆっくりと獲物を丸飲みにしますが、食べ終わった途端に慌てて逃げるように巣へと帰ります。
人間もなかなかクエを「食えん」、クエ自身もなかなか餌を「食えん」といえます。

クエの養殖は可能なのか?

クエは漁獲量が少なく、なかなか市場に出回ることが少ないために、幻の高級魚と呼ばれてきました。クエを食べたいというファンはたくさんいますが、漁獲量が少なくて安定供給ができませんでした。そのため、ホテルや旅館の名物としてクエを売り出すことがなかなかできませんでした。

また、クエはなかなか餌を食べず成長が遅いという問題点もあり、クエを養殖することは至難の業といわれてきました。

しかし近年、和歌山県の堅田漁業協同組合がクエとハタを掛け合わせて、比較的成長が早い種類のクエの開発に成功しました。

「ハタと掛け合わせたことで味が悪くなるのではないか?」 と疑問に思う方もいるかもしれません。ですが、このクエとハタを掛け合わせた養殖クエの味は、天然クエの味に負けないぐらいに美味しいといわれています。養殖の成功のおかげで、安定して供給できるようになり、高級魚であるクエを安価で手に入れることができるようになりました。ですから、クエの大ファンにとって非常に嬉しいことでしょう。
(Photo by KENPEI, Tomarin, ふうけ)

へぇーと思ったら、友達にも教えよう!