ニンジンの皮は、本当の皮じゃありません
スーパーで売っているニンジンを買うとしましょう。料理をするとき皮をむきますが、実はそれは皮ではなく、細胞(内鞘細胞)の一部といわれています。
ではニンジンに皮が無いのかというと、そうでもありません。出荷される時に、泥とニンジンの薄い皮も一緒に洗い落とされています。ですから、スーパーに並んでいるニンジンはすでに皮がないということになります。
ニンジンにはカロテンが多く含まれており、体内に吸収されるとビタミンAに変化します。ニンジン100グラムにつき、1万マイクログラムもカロテンが含まれているといわれています。そして、そのカロテンはニンジンの内側よりも表面部分に多く含まれています。ですから、ピーラーなどでニンジンの皮をむくというのは、大切な栄養素を捨てていることになりますから注意してくださいね。
またニンジンの表面には「うま味成分」も多く含まれてます。ですから、ニンジンを料理するときは、軽く洗ってそのまま食べるのが理想的といえます。
ニンジンと朝鮮ニンジンって何が違うの?
ニンジンには大きく分けて、西洋系と東洋系に分かれるそうです。もともと、ニンジンの原産地はアフガニスタン北部の山岳地帯といわれています。12~13世紀ごろにヨーロッパに伝わり、その後16世紀にオランダで改良されたものが西洋系ニンジンだそうです。そして13世紀に中国に伝わって中国で改良されたものが東洋系ニンジンといわれています。
日本へは、先に東洋系のニンジンが17世紀に伝わり、18世紀末に西洋系のニンジンが伝わったといわれています。現在は西洋系のニンジンが一般的で、東洋系ニンジンでは「金時ニンジン」と呼ばれています。この東洋系ニンジンは関西地方で改良され、「京ニンジン」や「大阪ニンジン」という別名もあります。
さて、ニンジンという名前は人の形に似ているところから名付けられました。ところが、もとを言えばニンジンとは朝鮮ニンジンのことを指していました。朝鮮ニンジンは、根っこが人の形をしているものが高級とされていたこともあり、「ニンジン(人参)」という名前がついたそうです
6~7世紀頃に薬用として朝鮮ニンジンが日本へ伝わり、その後に野菜のニンジンが伝わりました。その際、野菜のニンジンにはいろいろな名前がつきました。葉っぱが野菜のセリ(芹)に似ていることから「セリニンジン」とか、畑に植えるから「ハタ(畑)ニンジン」だとか、野菜という意味で「ナ(菜)ニンジン」などとも呼ばれていました。しかし次第に「ニンジン」と呼ばれるようになり今に至りました。
そして、朝鮮ニンジンと野菜のニンジンは形も似ており、「ニンジン」という名前も一緒ですが、実は同じ仲間ではありません。朝鮮ニンジンはウコギ科の多年草ですが、野菜のニンジンはセリ科の二年草です。ですからまったく別の植物ということになります。
ニンジンと大根は相性が悪い?
ところで、「もみじおろし」とは大根にトウガラシをねじ込んで一緒におろしたものをいいます。ちなみに、大根をおろしたものに、ニンジンをおろし合わせたものも同じように「もみじおろし」と呼んでいます。
でも、このニンジンで作る「もみじおろし」には栄養がないといわれていました。その理由は、ニンジンの酸化酵素の一種であるアスコルビン酸という物質が、大根おろしのビタミンCを破壊するからと言われていました。しかし、その後の研究によってその説は間違いとわかりました。
ニンジンのアスコルビン酸によって大根のビタミンCがより強い効果を持つと研究で分かりました。このことから、ニンジンと大根は相性が悪いどころか、相性が良いといわれています。
(Photo by Jonathunderm, Kander)