鰹のたたきが『土佐造り』と呼ばれる理由

鰹のたたきは『土佐造り』とも呼ばれます。このネーミングの秘密について探ってみると、日本人の飽くなき食への探求心がうかがえます。

江戸時代、鰹についている寄生虫が原因で食中毒となり、命を落とすことが問題になりました。そこで土佐(現在の高知県)の藩主であった山内一豊は、生の鰹を食べることを禁止。

しかし、独特な風味の鰹の刺身にはファンが多く「どうしても食べたい」という人は後を絶ちませんでした。そこで、表面を軽く炙ることで「これは焼き魚」と称して生の状態の鰹を食べることができたのです。もちろん、炙ることで実際に寄生虫を殺すことができるので、鰹のたたきにはそれなりに意味があります。

これは、あくまでも鰹のたたきの起源の一説です。しかし、様々なエピソードを探してみても土佐で生まれたことを支持するものが多く、土佐造りという名前が定着したことが考えられます。

鰹のたたきにショウガが添えられる理由

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一部の外国人の印象では、日本人は「毒のある魚を食べるのが好き」という認識があります。この『毒のある魚』とはフグのことを指しています。

魚に限らず、コンニャクも元々は毒のある植物ですし、日本人は「毒を処理してこそ美味や珍味が味わえる」と考える節があるようです。先ほど紹介したとおり、鰹のたたきが誕生した理由も「食べると危険な魚をどうにかして食べたい」という願望から生まれました。

さて、鰹のたたきには、薬味としてシソとショウガが添えられているイメージが一般的でしょう。実はここにも先人の知恵が隠されています。シソやショウガには味を整える効果や魚の臭みを消す効果があるだけでなく、高い殺菌効果があるのです。そのため、まれに魚に寄生するアニサキスという寄生虫(食べてしまうと激しい吐き気を催します)を殺す効果があります。

ことわざ『に鰹節』の由来

『猫に鰹節』とは猫に鰹節の番をさせると危険という意味から派生したものです。つまり「その人が好きなものを近くに置くことは、その人が過ちを犯す原因になる」ということわざです。

鰹節が猫に好まれる理由は、生魚の状態より、鰹節の方が味や匂いが濃くなることにあります。つまり、猫の嗅覚が魚の匂いに惹かれてやってきているということです。

なお「猫が魚を好む理由」は、実は私たちの勝手なイメージから生まれました。猫自身は動物性タンパク質であれば肉でも魚でも構わないのですが、江戸時代までの日本には肉や豚肉、肉などを食べる習慣がありませんでした。そこで、人間が食べた魚を猫の餌にしたところ、好んで食べたというだけの話なのです。

鰹節がお祝いごとに贈られる理由

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鰹節は縁起物として知られています。結婚式では「雌節(めぶし、カツオの腹肉でつくった鰹節)と雄節(おぶし、カツオの背側の肉で作った鰹節)で夫婦一体」として贈られるように、非常にめでたいものとして知られています。

また、家の新築時、上棟式として神社の屋根の棟木(ムナギ:屋根の一番上にある木)である「堅魚木(かつおぎ)」にちなんで贈られるという習慣もあります。引き出物として、言葉遊び的な部分も強いのですが、鰹節はお料理のダシや飾りなど、どの家庭でも利用されるものです。そのため、引き出物としても皆様から喜ばれるものです。

縁起がいい初鰹より戻り鰹の方が美味しい秘密

江戸時代には春に水揚げされる『初鰹』の人気が非常に高く、市場でも高値で取引されていました。「女房を質に入れても食べたい」と称されるほどの人気を誇り、将軍家に献上されたものや3両(約10万円)もの高値で取引された記録が残されています。

しかし、本当に鰹の脂が乗っている時期は鰹が南下を始める9月以降。いわゆる『戻り鰹』と呼ばれるものです。たっぷりと餌を食べながら泳いでいるため、しっかりと脂が乗っています。そのため、春先に水揚げされる初鰹よりも戻り鰹の方が味も良いということなのです。

鮮度の良い戻り鰹はたたきや刺身にして食べるとベストです。『とろ鰹』という名前も付けられているように、初鰹の5~10倍とも言われる脂が乗っています。そのため、旬の味覚としても非常に人気が高いのです。

(photo by ayustety, eematiyaizu.eshizuoka.jp, NOAA FishWatch)

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