鯉は長い時代を生きている魚

私たち日本人は鯉と深い関わりを持っています。長崎県・壱岐島(いきのしま)では2,500万~500万年ほど前の地層から鯉の化石が発見されています。

現在、私たちが想像する魚はスズキ目に属するものが多いです。特に食卓に並ぶような魚や観賞用熱帯魚、釣りの魚などはアジ、ブリ、タイ、キスブラックバス、サバ、マグロなど、枚挙に暇(いとま)がないくらい、とにかくスズキ目の魚が多いのです。

しかし、鯉はコイ目に属する魚です。コイ目は2番目に種類が多いグループです。魚の進化の過程において、古い時代から存在している魚の種類だと分かっています。

中国では鯉が紀元前5世紀頃から飼育されていたこと、日本でも2,000年前から飼育されていたことが記録から明らかになっています。他の魚が飼育されている記録はありませんが、鯉はその飼育方法まで詳細に記されています。今で言うハウツー本のようなものでしょうか。飼育魚としても最古の歴史を誇るのが鯉なのです。

錦鯉の歴史は交配の歴史

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鯉についてイメージしたとき、赤や白など、魚の中でもカラフルな印象を持っている方もいらっしゃるでしょう。本来の鯉(マゴイ)は黒い色をしているものが基本でしたが、突然変異的に様々な色の鯉が現れます。これを錦鯉と呼び、その中でも緋鯉や浅黄、黄金、昭和三色、大正三色など、色合いによって名前が変わります。

突然変異的に生まれていた錦鯉ですが、時代とともに人工交配が行われるようになります。江戸時代の記録を見ると、白地に赤い模様の鯉、いわゆる紅白の鯉を作ったという記録が残されています。これは緋鯉と白鯉を交配させたものです。

また、明治時代になると錦鯉を取り巻く環境は一変します。ドイツから鯉が輸入されたことをきっかけに、多くの鯉を交配させることになります。大正三色という分類の錦鯉が一大ムーブメントとなります。これは、白地に赤と黒の模様が入った錦鯉で、この鯉が注目を集めるようになりました。

昭和三色と呼ばれる模様の錦鯉も登場します。これは、頭部が黒いことも特徴的で、その模様のつき方によって様々な呼び方が存在しています。このように、錦鯉は観賞用の魚として改良を重ね続けられています。錦鯉の歴史とは交配の歴史なのです。

鯉の食べ方には気をつけること

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鯉にはすっかり観賞用の魚というイメージがあります。しかし、実は元々、食用の魚として知られており、刺身、甘露煮、丸揚げなどが代表的な調理法です。

鯉を調理するときに注意しなければならないことは寄生虫です。淡水魚ですから、刺身にするときは必ず洗いにする必要があります。いったん50~60℃程度のお湯に入れて、氷水でよく冷やしてから調理を開始することで、寄生虫の心配がなくなります。

鯉を食べる場合、特に野生のものは非常に注意が必要です。泥などと一緒に餌を食べていますし、当然ですが、寄生虫などへの対策も一切行われていません。鯉は水質環境なども問わずに生きることができる非常に生命力の強い魚です。その反面、自然のものを食べる場合は必ず専門家の意見を求めましょう。

さらに、鯉は毒を持っています。胆嚢(たんのう)には非常に強力な毒が含まれているため危険です。調理中に間違って潰してしまうと、全身に毒が回ってしまうのです。

漢方薬としての歴史を持つ鯉

1,500年前、中国の医者である陶弘景(とう こうけい)は「鯉の肉は糖尿病、肝臓病などに効果的で、さらに、気分を落ち着かせる作用を持っている」と薬物書に記しています。

事実、胃潰瘍やストレスにも効果があることも知られています。ラットを使った実験を行ったところ、鯉の肉によって30%のラットが改善したという結果が現れたというものです。今まで胃潰瘍が治らなかった人にも効果があったという事例もあります。

さらに特筆すべき点は鯉が婦人病に効果的ということです。母乳の出が良くなるということでも知られています。まさに様々な病気に効果のある薬なのです。

(photo by katorisi, 松江城と周辺観光地案内 http://homepage2.nifty.com/matsue-jo/)

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