根性のケーブルカー

公共交通網である電車。一度に多くの人数を運ぶことができ、速さもそこそこ。運賃も安く、とても便利な乗り物です。都市圏はもちろんのこと、日本中に張り巡らされたレールを毎日ひた走る、生活の中には無くてはならない存在です。しかし、そんな電車にも弱点があります。

それは、坂道と、急斜面です。モーターや馬力や、鉄輪とレールの摩擦係数の関係上、電車はあまり急な坂を登れないのです。
そこで登場するのが“ケーブルカー”です。ケーブルカーは車体を鋼鉄のロープで繋ぎ、それを捲き上げ機で引っ張ることで動きます。この方法のお陰で、普通の電車では登ることができない急斜面も、楽々と登っていくことができます。

ケーブルが切れたら

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ロープだと切れた時に心配…と思うかもしれませんが、心配はありません。ケーブルカーは、ケーブルが切れてしまった際、瞬間的にレールを締め付け、車体を固定する停止装置が働きます。そのため、急斜面を転げ落ちる、なんてことはありません。ただし、安全基準として、ケーブルカーの登る事が出来る傾斜角度が決められています。おおよそ40度程度までです。

ちなみに、日本で一番傾斜の強いケーブルカーは、東京、高尾山の高尾登山ケーブルです。

比叡山延暦寺に続く坂本ケーブルは、文化的価値としても認められ、登録有形文化財に指定され保護されています。坂本ケーブルは路線が日本一長く、全長が2025mもあります。

衰退するケーブルカー

ケーブルカーは別名で、「鋼索鉄道」、「鋼索線」等とも呼ばれます。昔は観光や公共の交通機関として多くのケーブルカーがありましたが、衰退の途をたどっています。現在ではもっとポピュラーな存在になったロープウェイ、技術の発展により長い距離でも使用できるようになったエスカレーター等の登場で、その数は少なくなっています。それでも、坂をするすると登るその乗り心地と独特の景観にはファンが多く、今でも観光者は多いです。また、国も保存の為に文化財登録をしています。

ところで、「ケーブルカー」ときいて、「ロープウェイ」を想像した人もいるのではないでしょうか?どちらも同じく鉄製のロープ(ケーブル)を使って車体を引っ張りますね?実は、ケーブルカーと言う単語はロープウェイを差すこともあるのです。しかし、基本的な区別として、空中に浮いているものをロープウェイ、地面に接地しているものをケーブルカーと考えてください。

また、車内に居てアナウンスなどをしてくれる人を、「運転手」と言いますが、実はこの人は運転をしていません。ケーブルカーの操作は、全て坂の上の機械室の人が行っています。車内の運転手は、エレベータガールのイメージです。ロープを引っ張り、地面に踏ん張る、ケーブルカーは根性のある乗り物なのです。

(Photo by Jimmy Engelbrecht, Arpingstone)

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